悩みが出てくるのは、豊かさが生まれたときなのです。 命の危険がなくなり、余裕が生まれてはじめて「この仕事は自分に合っているのかどうか」などと悩みが生まれます。 そう、悩みが出てきて、やりたくないことや、やめたいことが出てくるというのは、実は、それだけで豊かなのだということです。
『時間はくすり』(比留間榮子/薬剤師)
今夜の名言は、95歳のとき「最高齢の現役薬剤師」としてギネス認定された比留間榮子さんの言葉です。
現在100歳に近い榮子さん言葉は、人生について悶々と悩んでいるとき、スーッと心にしみ込んできます。自分の視野の狭さ、豊かさに気づいていない事実を知ると、悩みが小さく感じられます。
現代では「嫌なことはしない」「好きなことだけで生きよう」という自己啓発本が人気ですが、その選択ができることは豊かであり、感謝すべきことなんですね。
生き延びるだけで必死だった戦争を経験している、著者の言葉には重みがあります。紹介したい言葉がたくさんありすぎて困るくらい、素晴らしい本でした。興味が湧いた方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。
おぼろ月
長生きの秘訣は「習慣」と「挑戦」
人の心はすぐに「嫌だな~」「面倒だな……」と負の思考に支配されてしまいます。何かを始めるのも億劫になり、スタートするまでに時間がかかることも。
榮子さんは、習慣化されることでネガティブな感情が消えていくと伝えています。彼女にとっては健康や仕事、女性としての身だしなみの習慣など。型が決まっていると行動が苦になることがないのだと。
そして、長生きの秘訣は、「習慣」と「挑戦」を増やしていくこと。何歳になっても、新しい習慣を自分のものにしていける、と語っています。
おぼろ月
人と向き合うときは真摯に、真剣に
この本の中で心に響いたエピソードを紹介します。ある日、店内が込み合い、怒って帰られた男性のお客様がいました。榮子さんは店を閉めてから、彼のもとに謝罪をしにいきました。
玄関先で男性は「もういいから」と投げやりな態度を取られましたが、じっくり話を聞きたいと伝えました。すると、その男性は、数か月前に奥様を亡くされたこと、ひとり身で掃除や洗濯に忙しいこと、薬を取りに行ったときも気持ちが急いていたことなどを話してくれたのです。
そして、最後は「心配してここまで来てくださって、本当にありがとう」と榮子さんに伝えました。たとえ相手が怒っていても、理解しようと真摯に話を聴く姿勢が大切です。相手の心を動かした、彼女の優しい対応に感動しました。
おぼろ月
プライドは必要、人の目は不要
人からの評価を気にしているとき、自分の意見を正直に伝えられなかったり、うわべだけの関係を続けたりしてしまいます。そこには「嫌われたくない」という執着があって、相手のためにならないことも多いです。
榮子さんは薬を扱う仕事なので、少し強い口調でたしなめる場面もあるといいます。そんなとき、相手からの評価を気にしていたら、命にかかわる薬を手渡す役目が果たせません。
人の評価を気にしない代わりに、本当の意味で誰かの役に立つことにプライドを持つ。目の前の人の役に立てるよう、せいいっぱい集中するのが大切だといいます。
おぼろ月
世界最高齢の〇〇になりたい!
この言葉は、「もうこの年だから、新しいことを始めるなんて」と言われたとき、榮子さんが伝えたものです。わたしは今40代後半なので、年齢的にも自分に言われているみたい。
90代でも現役でお客様と接している薬剤師がいる、そのことを世界に伝えたいと、お孫さんがギネスブックへの挑戦を勧めたそうです。
この本の執筆に関しても「私がお伝えできることがあるのだろうか」と心配されていましたが、彼女の年齢だから伝える意味がある、と背中を押されたといいます。
過去の記事でも紹介しましたが、83歳で世界最高齢のプロDJとして認定されたSUMIROCKさんも素敵でした。彼女がDJの勉強を始めたのは77歳からなんです!(↓関連記事はこちら)

何かを始めるのに、遅すぎることはない! やりたいと思ったことは、年齢なんて気にしないで始めるといいですね。
おぼろ月
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『時間はくすり』(比留間榮子・ひるまえいこ)
◆著者について
薬剤師。1923年東京生まれ。1944年東京女子薬学専門学校(現明治薬科大学)卒業。薬剤師である父の姿を見て自身も薬剤師になることを決意し、大正12年に父が創業したヒルマ薬局の2代目として働き始める。父とともに、戦後の混乱の渦中にある東京の街に薬を届ける。薬剤師歴は75年。95歳のときにギネス記録「最高齢の現役薬剤師・The oldest practising pharmacist」に認定。現在も調剤業務をこなしながら服薬指導や健康の相談に乗る姿は、「薬師如来のよう」と評判を呼び、地域の人たちの心のよりどころとなっている。孫で薬剤師の康二郎氏とともに、薬局の理想の姿を目指し奔走する毎日。(本書より引用)