この世界にあるものを「すごい!」と感動することで、人は生きていると感じられるはずだから。 教師の役割は、その「すごさ」を発見する方法を伝えることなんです。
『生きる力ってなんですか?』(齋藤孝/教育学者)
「生きている」と実感できるのは、どんなときでしょうか?
今ではインターネットが発展して、動画や写真などでバーチャル体験ができます。でも、それはリアルな経験とは違います。
有名な美術品、芸術作品、音楽など、実物に触れたときの感動は深く心に刻み込まれます。ワクワクする初めての感動を味わうことで、生きる力が湧くこともあるでしょう。
今夜の名言は、明治大学教授をされている齋藤孝さんの言葉です。生きづらさを感じている、現代の学生に向けて書かれた本から抜粋しました。
今日は、生きる力を育てるヒントについて紹介します。なんとなく毎日が不安で、心がモヤモヤする人に読んでもらいたいです。
おぼろ月
contents
お天道様を拝もう
2010年・チリのサンホセ鉱山の事故で、33人の作業員が坑内に閉じ込められました。2ヵ月以上も真っ暗な中に閉じ込められていた人々の話は、『THE33』という映画にもなりましたね。地道な救援活動の末に救出され、美しい青空をみたとき、どんな思いがあったでしょう。彼らは青空を見るたびに、生きる喜びを感じているかもしれません。
日本には、「お天道様を拝む」という昔ながらの風習があります。太陽が照らしてくれている、ただそれだけのことに「生かされている」と感じられる心があれば……。
太陽を神様とするのは、世界中のいろいろな国にある考え方だそうです。今ここにある恵みに気づけたら、その瞬間から幸せになれますね。
おぼろ月
憧れの人をまねよう
昭和期に活躍した棟方志功(むなかたしこう)という世界的な版画家の話が紹介されていました。
彼はゴッホの『ひまわり』の絵を見て心を動かされ、「ゴッホになる!」と熱意を燃やしました。そして、がむしゃらにゴッホの絵をまねて作品をつくり続けたのです。憧れの人をひたすらまねているうちに、彼は世界的な版画家になっていきました。
学ぶという言葉の語源は「まねぶ」から来ているといわれています。
最初はだれかのまねでいい。憧れの人をまねているうちに、自分の技術が上がっていき、自分らしさが出て本物になるのです。
おぼろ月
疲れを感じないことが才能
夢を追いかける途中で「才能がないからあきらめる」という人も多いでしょう。でも、才能があるというのは、何かが人より秀でているということではありません。
長い時間やっていても疲れない、むしろ楽しくてやめられない。うまいとか下手とかではなく、ずっと続けたくなるものが才能だ、と著者はいいます。
先日、長男が「プロになれないならスポーツ(部活)する意味ないやん」と言っていました。心がモヤっとしながら、「好きなことを続けるのはいいと思うよ~」「身体を鍛えるのも大切」と答えました。
とはいえ、わたしも絵を描くことが好きでしたが、「才能がない」「仕事にできない」と思ってあきらめた経験があります。
何時間、絵を描いていても楽しくて疲れなかったのに、人と比べたり、そこに意味を見出そうとしたりした途端に、世界が色あせてしまったのです。
でも、好きなことに夢中になった時間は無駄ではありません。何歳になっても、〇〇になりたいと夢を見つけてワクワクできるといいですね。
おぼろ月
この本は中・高校生向けに書かれたものなので、若かりし頃の自分を思い出しながら読みました。
学生向けに「なぜ学校に行くのか?」「友だちの作り方」なども語られているので、興味が湧いた方は手に取ってみてくださいね。
『生きる力ってなんですか』(齋藤孝・さいとうたかし)
◆著者について
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は、教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。NHKEテレ「にほんごであそぼ」総合指導。著書に、『地アタマを鍛える知的勉強法』『すごい「会話力」』、「齋藤孝のイッキによめる!」シリーズ(以上、講談社)ほか。著書発行部数は合計で1000万部を超える。