「作る」とは何か? 「完成」とは何か? 僕は、制作活動の終わりの地点を「完成」と呼ぶのではなく、制作物がお客さんの手元に届くまでの動線を設計し、お客さんの手に届いた地点を「完成」と呼ぶことにしました。
『ゴミ人間』(西野亮廣/芸人・絵本作家)より
西野亮廣さんが原作・脚本・製作総指揮を務める『映画 えんとつ町のプペル』が大ヒットしました。日本アカデミー賞・優秀アニメーション作品賞受賞も話題になりました。
『ゴミ人間』というエッセイ本は、映画公開に合わせた広報活動として執筆されたそうです。彼は公開1ヶ月前という寝る時間もないほど忙しいときに、何とか作品を宣伝をしようと執筆や広報活動をしていたのです。
おぼろ月
「作る」という言葉の意味
漫才師としてレギュラー番組に出演したり、M-1に出場したりと忙しく活動していたころ、西野さんは先の見えない「絵本作家」としてのスタートを切りました。
多忙な中でコツコツと制作を進めて、4年以上の月日を費やして描いた処女作『Dr.インクの星空キネマ』が完成。これで世間に認められる・報われると考えていたそうです。
でも、売り上げ部数は2万5000部ほど。2作目も3作目も、同じような結果に終わりました。
ただ、ここで彼が気づいたのは、作品を「作った」だけで届ける努力をしなかったこと。どれだけ素晴らしい作品を作っても、それがお客さんに届かなければ、何も伝えることができません。
そうして彼は「売る」ことに真剣に向き合うようになりました。
絵本を「おみやげ」にすればいい
西野さんは自分が買う側になったとき、自分が買ったことがあるもの・ないものを書き出して整理しました。すると彼自身、本や音楽など「作品」と呼ばれるものをあまり買っていないことに気づいたのです。
生活必需品は買うけれど、生きていく上で必要ではないものは買わない。彼の生み出した「絵本」は、生活に絶対必要なものではないのです。
ただ、必需品ではないのに売れているものがあります。彼自身「おみやげ」に関しては、観光地に行ったときに購入していました。(普段の生活には必要ないキーホルダーや旗、提灯など)
そこで、「個展会場のおみやげ」として絵本を会場の入り口に置いてみたところ、飛ぶように売れたそうです。
おぼろ月
話はそれますが、先日、旦那さんが仕事でUSJに行き、家族(妻と3人の子供たち)に1個1500円以上もするキーホルダーやマグカップやボールペン等を買ってきました。
「高いなぁ。無駄遣いじゃないの?」と内心ムッとしましが、家族への愛情表現として「おみやげ」を購入する、旦那さんの気持ちも大切にしたくなります。戦略ですね~。
日本中から笑われた夢がある
彼が「絵本作家になる」と決めたとき、周りから批判を受けることが多くありました。笑われたり、叩かれたりする場面も、そう遠くない記憶に残っています。
彼の想いが書籍やユーチューブなどで発信され、映画が上映され、たくさんのお客さんに届いたとき、感動が生まれました。
ただ作っただけでは何も始まらない、多くの人の手に届いたときにドラマが起きるんだ、と感じました。
おぼろ月
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『ゴミ人間』(西野亮廣・にしのあきひろ)
◆著者について
1980年生まれ。芸人・絵本作家。99年、梶原雄太と「キングコング」を結成。人気絶頂の2005年に「テレビ出演をメインにした活動」から軸足を抜くことを決意。09年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本作家デビューを果たす。16年に発表した絵本『えんとつ町のプペル』は累計発行部数50万部超のベストセラーに。20年12月公開予定の映画『えんとつ町のプペル』では原作・脚本・制作総指揮を務める。現在、有料オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破、国内最大となっている。(Booksデータベースより)